蝦夷富士

蝦夷富士と呼ばれている羊蹄山が雪を頂いて、くっきりと顔を出していた。
何度こんな景色をみただろう。
でも、そのつど違う羊蹄山に、また感動が深まる。
洞爺湖まで、何度も角度を変えてその姿を堪能した。
半年ぶりの有珠の家、恐る恐る覗くと、玄関から廊下は然程の驚きではない。
しかし、居間に入ると、慣れてはいても「キャーーーーーーー」の状態。
フローリング全体に、カメムシ、ハエ、テントウムシなどの死骸が・・・・・。その数半端ない。
きっと虫の苦手な人は、卒倒ものだ。
今回、天井から、何かが落ちたと見えて、床は虫に混ざり、白いものが点々と。
2階にあがると、畳一面に虫達がまるで、宴会の後のように散々と。
長い時間かかって、掃除終了。今回は、私一人での掃除、ではなく小学2年生が手伝ってくれた。
ま、いないよりはまし、と言う程度だけど。
居間から見える景色は、小高い山。でも、なんかいつもと違う、と思ったら、大きな栗の木が倒されていた。あんな大きな木がないだけで、景色がガラッと違う。
何でも、持ち主の隣りの婆ちゃんが、近所の人に頼んで切ってもらったとかで、作業が続いていた。
何で、亡き爺ちゃんが植えた木を倒すのか、私には、理解できなかったけど、婆ちゃんには婆ちゃんの理由があるみたいだった。大きくなりすぎた、とか、畑の作物に陽が当たらないとか、もう、栗もならない、とか。
ま、婆ちゃんの木だから、いいけど。
切り刻まれた木に、御苦労さまとお礼を言った。
婆ちゃんの畑の隣りの家は、住んでいた婆ちゃんが病気で長期の入院をしている為、家は廃屋で荒れ果てている。しかし、息子がいるみたいで、たまに、管理に来るらしい。
一昨年、その家の裏に、アイヌネギが密集しているのを発見し、狂喜乱舞した私は、こんな近くに穴場があったと沢山頂戴した。
所が、去年、そこは花畑に変わっていた。
誰も見ない花畑に。
何のために、誰も見ないのに花植えたんだろう?
わからん。
この世は、分からんことだらけだ。
ま、いいか。寂しく思うのは、どうやら私だけみたいだから。
そして、隣りのtさん宅、唯一のお隣さんだけど、御主人の腰とひざが悪化して、もう、自然の中の一軒家を維持出来なくなったからと、札幌に引っ越す決心を固めたそうだ。
ここ有珠は、去年、唯一の店のコンビニがなくなった。
買い物に行くには、車がないと行けない。畑の婆ちゃんは、一週間に一度、農協のバスで、農協ストアまで買い物に出るそうだ。
そして、住民の強烈な要請で、移動販売車が今年から回ってくるようになったそうだ。
というわけで、過疎化の一途をたどっている、この小さな村は、自然の恩恵は受けるけど、年寄りはもう暮らしていけない、という矛盾も含む村になってしまったようだ。
有珠の山の麓で、山と海に囲まれ静かで、素朴で大好きなこの村だけど、我々もまた、いつまで通えるのかわからない。
お隣さんも、家と土地を売りたいけど、誰も買ってはくれないだろうと、諦めているそうだ。
都会で、きっと欲しい人も」いるかもしれない、でも、やはり、あのまま、廃屋になるのかもしれない。
洞爺湖に入る手前にあったポロモイという温泉も、出来て3,4年でつぶれてしまったし、洞爺湖の温泉街もすっかりさびれてしまった。

昨日、着いたのがお昼すぎで、ラッキーママから電話がきたのは、4時近く。
近くにいるから寄るねーと。
そして、アイヌネギ、ふき、ホタテの稚貝、生わかめ、タランボの芽などのとりたてをもってきてくれた。そこへ、畑の婆ちゃんが、ホウレン草をとってくれた。
ホタテの味噌汁、ホーレンソウの胡麻和え、たらんぼの天ぷら、生わかめの酢味噌和え、アイヌネギと豚肉の炒め物、ホタテの蒸し物、蕗の油いためなど、超豪華なとれたてもので、食卓は有名レストラン顔負けの、旬満載の料理で埋まった。
めったに褒めない連れ合いが「オー、なんという美味さ!素晴らしい!幸せ!」といいながら、舌づつみを打った。
何もかもが、採れたてって、やっぱり有珠はいいなあ。
今朝は、山に入ってこごみを採った。蓬や、すぎなには時間がなかったので、手が出なかった。
突風でテラスの屋根がふっとんでしまったり、居間にかけていた大きな絵が床におちていたり、テントの物置が破れたりと直さなければならない個所が沢山あって、今回は、手が回らなかったので、また、来週出直す事にした。
洞爺湖ラソンを避けるため、室蘭周りで早めに札幌に向かった。
途中、室蘭で温泉に入ろうかという連れ合いに、即座に「いや、いい」と言ってしまった。
そして、虎杖浜で初めて入った温泉。穴場だった。外はおんぼろだったけど、温泉が柔らかい。素晴らしい温泉だった。おまけに、すいていて、孫と2人でゆっくりと温泉に浸かって、幸せだった。
設備のきれいなところもいいけど、こんな素朴な温泉もなかなかいい。
疲れた体が、癒される感じがした。