築42年の古民家

我が家も古いが、息子の住む家も古くて、あちこちガタガタだ。
流し台も大工さんが作った昔の流し台だったけど、ついに壊れて去年新しいのに取り換えた。
窓もサッシでないのもあって、順番にサッシに変えていってるが、内窓は木枠のところもある。
持ち主の夫がなおすといっても、変わり者の息子が「いやいいよ、このままで」など、はんかくさい事を言うものだから、冬などビュウビュウ風が入ってきて、家族は省エネもしているので、重ね着をして過ごしている。
先日来の吹き付ける大雨で、2か所の窓枠から雨が入り、大騒動だった。
早速工務店に見てもらい、最低限度の応急処置をすることになった。
ワラジムシ、ネズミ、ナメクジ、蟻といつも虫と格闘している家族は、それに加えて、蛙、メダカ、ヤモリ、等も飼育している。
アウトドア派の家族だからまあ、いいけど、きれい好きの人なら大変だ。
2軒長屋を1軒で使っているので、部屋数は12もある。子供の友達がくると、鬼ごっこやかくれんぼで家中走り回って楽しそうだ。
食卓テーブルも外用のテーブルとイスで、まるで家の中でキャンプしているようだ。
そんな家なので、来客も気兼ねなく来るし、ホームステイの人達もなんだか楽しんでいられる家なのだ。
それが、このたびの雨騒動で息子が意外なことを言った。「次から次とこんな調子なら、いっそ、2世帯住宅建てた方がいいんでないか?」へーーえ、家なんて雨風しのげればいいんだ、みたいな人が、そんなこと言うって意外も意外。
連れ合いに言ったら「あいつが建てるならいいぞ」これで、現実離れした。
ま、いつまでもつか、あの古民家。
このたび、工務店の方達と話していて、驚いた。
大工さんがいない、左官屋さんがいない、型枠職人がいない、という。
何で?今年も新卒で大工見習いが15人も入ったそうな。所が、あっという間に半分以下に減ったとさ。何故か?親が、危ないし、きたないし、きついし大変だからってすぐ辞めさせるんだって。
仕事はあるのに、人がいない。結構高額の給料なのに、なり手がいないって。
このままでは、日本の家建てられないってことにならないのか?
中国やアジアの人が多いんだって。
しかも、ちょっとした仕事、直して色塗って仕上げるなどという大工さんが一人でもできることを、今は仕事が細分化して、材料を運ぶ人、大工仕事をする人、色を塗る人、材料を片づける人と全部違う人がするんだって。
そして、大工さん以外の人が脚立に乗るのさえ禁じられているんだって。いやいや、聞けば聞くほど、不思議な世界になっているみたい。うちのつれあいみたいに、材料切って、測って、トンカチやって、ペンキ塗って壁張ってと一人ですべてこなしてしまうそんな人が、今はいなくなったそうな。「お父さん、使ってもらったら?」お世辞かもしれないけど「いやあ、御主人のような器用な人欲しいです」だって。こんな才能あるのに、使わないってもったいないなあ、テレビ見て余生を過ごしてる場合じゃないしょ、と日ごろ思っている私だから、この夫の類まれなる才能がいつかどこかで花開きますように、工務店に、も一度掛け合ってみるか?
なあんてね。

いやあ、なんか面白いことになってきました。
お弁当を頼まれた話しをお客さんにしたら「それ、面白い!引き受けなさい。私達が手伝うから。車も運転するから」と先週言って下さったお二人が、仲間の方を連れて今日来て下さった。
何でも、お花の先生とかで、かなり独創的な花束とかを作る方とか。
その方も、いつの間にか、私のお手伝いをかってでて下さって、話はより具体化してきた。
アイディアが続々出てきて、4人の熟女は、まるで少女のように企画を練り合った。
彼女達は其々の得意分野で活躍してきた方達、だから、そのアイディアもとっても面白い。
何より、お金が絡んでいないのに、嬉々としてやる気満々だ。
エプロンも黒のお揃いを作って下さるそうな。
「みんなお揃いの方が士気があがるでしょう?」って。
いやあ、楽しいね、面白いねと乗り乗りの3人、私もこれから献立を練るとしよう。
こんな面白くて楽しいことが向こうからやってきてくれる、って何て幸せ!


お祭り2日目は土砂降りの雨、昼から一時あがったものの、夜再び雨が降って、湿気に弱い三味線が中止になった。
いけ面兄ちゃん2人と21歳の女子と中学生のうちの孫娘のメンバーで、この日の為に必死でお稽古してきたカッコイイ曲を弾けなかった4人は、打ちひしがれてかわいそうだった。何よりあの大雨の中、カサをさして楽しみに待って下さった方々に申し訳なかった。けど、こればかりは仕方がない、人生ってそんなこともあるのさ、と慰めても孫は大粒の涙を流して悔しがっていた。しかも、神社の役員の前で弾いたあと、かなり酔っぱらった爺ちゃんに孫が廊下でつかまって「もっと、迫力ださんかい」と言われたそうだ。
「一生懸命弾いたのに、ヒドイ!」と孫は悔しがって、また泣いた。
でも、いくら酔っ払いの言うことでも、真摯に受け止めなさいと私は言ったけど、舞台に立てなかったことと、酔っ払いじいちゃんに言われたことが一日たってもまだ尾を引いていた12歳の孫。
その孫を私の仲間が一喝してくれた。「いつまでも、人の言うこと気にしない。それより、もう前に進みなさい。次の舞台の事考えなさい」そしてもう一人の仲間が言ってくれた。
先に出番だった「津軽屋富士子」という大先輩が「あの子、いい音だすねえ。亡くなった師匠にそっくりな3の音だ」と言ってくれたので、舞台のそでで、涙が出た、これは言うまいと思っていたけど、あんたが泣くからつい言っちゃったわ、と。
孫は去年、何か師匠と約束していたらしく、その約束を実行したかったのに出来なかったことで、更に悲しみが重なったようだ。12歳の少女が、なかなか体験できないことをして、先輩に助けられながら、仲間に見守られながら、少しずつ成長している。家族だけではない、色んな方達に、導かれているなあと感謝でいっぱいになる。
先の事はわからないけど、今、彼女は三味線が大好きで、夢中になって弾いている、しかも、それを聴いて下さる方がいる、なんて幸せなことだろう。
さあ、しばらく三味線もたなかった婆ちゃんも、そろそろ、復帰しようか。
久しぶりに弾いたら、やっぱり、楽しいわ。
孫の成長を横目で見ながら、婆ちゃんなりに、もう少し頑張ってみますか。