タイ少数民族の村

チェンマイから車で2時間の少数民族の村へのトレッキングの途中立ち寄った小さな村で、民族衣装を着たおばさん達が、井戸端会議をしていた。
みな一様に胸から小さな袋をぶら下げていた。
なんだか楽しそうにおしゃべりしていたので、引き付けられるように側によった。
くちゃくちゃと何か噛んでいる。口の中は真っ赤だ。
何を噛んでいるんだろうとそのおばさんの口を覗いたら、歯っかけだらけのすきすきの口の中を大口開けて見せてくれた。
「あんたもどう?」「うん、やってみるわ」何やら黒い石みたいな物を口に入れられ、次に葉っぱの上に胸の袋から出した白いクリームみたいな物をのせて塗ったくって、それを小さく畳んで私にくれた。「飲むの?」「いやいや、噛むんだよ。噛んだらぺーっと吐くんだよ」
口に入れたとたんにがいのなんの。「うーーーーーー、にがーーーー」
おばさん達が一斉に笑った。「どれ、口あけて御覧。ほら、あんたの口の中、私とおんなじ真っ赤だよ」「ありがとう」「いやいや、なんもさ」「じゃあ、またね」「うん、またおいでな」
会話は日本語と民族語とジェスチャーのみ。
ガイドのボブと孫のmは我々おばさんのやり取りをニコニコ笑ってみていた。あとで孫に言われた。「あのおばさんたちと何の違和感もなく溶け込んでたよ」と。
時々、あの時の光景が懐かしく思い浮かぶ。
本当はもう少し、あそこにいたかった。それほど私にとっても、違和感の全くない幸せな村だった。
今日、蜘蛛を見て、急にあの村を思い出したのだ。
何故って、あのあとで山に登る途中で、大きなきれいな蜘蛛が木にぶら下がっていたので「気持ち悪ーい」と言ったらガイドのボブが「あれは小さい方だよ。もっと大きい蜘蛛の方が美味しいんだ」「美味しい?食べるの?」「そう、とっても美味しいんだよ」だって。
ボブはやはり山岳民族の村の出身なので、この辺の山の自然には詳しくて、薬草も沢山教えてくれた。残念ながら私の英語力では、それがどんな薬草なのかまでは、理解できなかった。
中でもソープツリーという名の葉は、面白かった。
茎を折るとそこに息を吹きかける。すると、あら不思議、シャボン玉が飛んだ。孫は面白がって何度もシャボン玉遊びをしていたっけ。