悲しい別れ

それは突然だった。不意を突かれて冗談かと思ったが、現実と知り泣き崩れた。
声を出してオイオイ泣いた。泣いても泣いても涙は枯れない。
あれからたった6日しかたっていないのに、もう1か月もたったような、長く辛い日々だった。心は悲しみにふたがり、何をみても、むなしい。こんなに突然の別れがくるとは、想像だにしなかった。
沢山の別れをしてきたけど、親6人も見送ったけど、こんな理不尽な悔しい別れはなかった。
横浜の舞台でジョンガラを弾きながら倒れた師匠は、苦しみさえなく、迷わず真っ直ぐ天に帰っていった。
棺に納められた師匠の姿に、やはりこれは本当だったのだと愕然とした。
師匠の微笑んでいるような穏やかな顔は、舞台の上で逝った満足を表しているかのようだった。
去年、念願の「日本一」を獲得し、これから日本中にあの素晴らしい三味線の音を鳴り響かせるはずだった。残念という言葉では追いつかないほどの、悔しく悲しくむなしい思い。
ポッカリ穴の空いた私のこころ、空を見ては涙し、師匠の事を考えていなくても、涙が流れ、まして、蓬ほうに張ってある師匠の35年リサイタルのポスターは、辛すぎてはずしてしまいたい。
これから何をよりどころに生きていけばいいのだろう、師匠の三味線に惚れ、師匠が大好きで尊敬し、ある意味では息子のように可愛かった。
悲しすぎて体に力が入らない。
私と同じくらい嘆き悲しんだ6年生の孫娘は、一昨日、師匠の葬式を済ませて直ぐに、父親と二人でインドへと旅立って行った。エキサイティングな体験は、師匠の死の悲しみをほんの少し紛らわせてくれるだろう。
びぬとロキシーの二人のインド人の愛する息子達の家庭で、これから10日間お世話になる孫娘、きっとたくましくなって帰ってくるだろう。