赤土の十字路

昨日きたhさんに、9年前のベトナムでの体験を話していて、急に鮮明にあの体験が蘇った。
ベンタン市場で、初めて会ったお兄ちゃんと二人でチエンマイの川の対岸まで行き、シクロの上から赤土の十字路を見たとき、不意に沸いてきた懐かしい気持ちが。
何故か涙が出てきて、あの時は自分の感情に戸惑ったけど、確かにいつか自分がそこにいたような懐かしさが、きっと前世で私はあそこに暮らしていたのだと今は確信している。
そして、シクロのお兄さんに連れて行かれた尼寺、その後ろに導かれ、思わぬ孤児院の赤ちゃんとの遭遇。
あの赤ちゃんを抱っこした時、この子に会う為にここに来たという不思議な確信、そして、一年間またあそこに行きたいと心で思い続けて、それが叶った翌年、ティンとの出逢い。「おばさん、また来てね。絶対来てね」と私に抱きついたティンのあのぬくもり。いつも、ティンのことを思っていながらも、ティンがあの孤児院にいる間には行く事が叶わなかったこの9年。ティンはもう二十歳を超えたはず。幸せにしているだろうかといつも、ティンの幸せを願っている。
ティンは、はるか遠い日本のオバサンが自分の幸せを願っているなど知る由もないかもしれないけど、何年たとうと、あの時ティンが私を抱きしめたあの瞬間は、私の中で、赤土の十字路とともに、大切な一瞬となっている。