終の棲家

ボラ仲間のtさんは最近ご主人を亡くされた。
49日も済まぬ前にtさんは、ひとつの結論を出した。終の住処を道南の町に移すと。
もう80歳を過ぎ、いくら故郷とはいえ、もはや親戚もいないその町に。友人がおいでと言ってくれたというが、その友人も80歳を過ぎている。
あまりの急な選択に、我々仲間は驚きあきれたが、もう決めた事なので、余計な口ははさめない。
色々と家庭の事情があり、かなり精神的にまいっているので、ある意味仕方がないけれど。
もう20年以上一緒にやってきた仲間であり、その会の会長でもあるので、副会長の私としてはかなり戸惑っている。何故か、私は出来れば会長にはなりたくない。今までのように、会長の下働きでいたい。だから戸惑っている。しかも、会長のように熱心でもなく、月1度のボラ専門なので、このペースを乱したくない、と思っている。
しかし、現実にはそうもいかず、どこかで腹をくくらねばならないかもしれない。ああ、かなり、憂鬱。
今日のボラは、選曲が良かったせいか、お年寄り達は皆ニコニコ笑顔で実に楽しそうだった。
藤山一郎の東京ラプソディ、高峰三枝子の南の花嫁さん、若原一郎の唄等等、懐かしく身近に歌っていた曲ばかり。
いつも、思うけど本当に音楽の力は大きい。今日は一人一人の顔が輝きだしたのが見えて、特にそう感じた。
「お父さん、新婚旅行はどこ行ったの?」「登別」「良かったかい?」「うーん、よかったよ」などと会話しながら一緒に歌う楽しさは、いや、なかなかいいもんです。この頃は、月に1度のこの日を心待ちにしてくださる方が多くなって、増す増す嬉しい。
終の棲家について書こうと思ったのに、横にそれてしまったのでまた今度。