田舎暮らし

有珠の家が雨漏りし、村の板金屋さんに見積もりを頼んだら「こんな高い屋根、おっかなくて登れねえ」と断られた。そこで我が連れ合いとその兄は「よし、2人で登って直すべい」とあいなった。
「まさか!」とびっくりしたが、やると決めたらやるこの兄弟。へたな口は挟めない。
一日先に行った我々夫婦。のんびり花を摘んで絵を描いていた私に「オイ、俺が屋根から落ちてもそこにいたらわからんべ。そばで見てれや」なんと連れ合いは一人で登ると!
雨が降りそうなので明日迄待てない、一人でも大丈夫と言うではないか。
持ってきた梯子は8メートル、足りない2メートルの梯子を2本自分で作って、煙突の枠に引っ掛けて、ベルトにかなづち、コーキング材,電動ドライバーを紐でくっつけて、軽々と10メートルの屋根に登った連れ合い。
屋根のてっぺんにまたがって作業開始。勿論命綱はつけたし、梯子も支柱にくくりつけたし万全の体制ではあるけれど、なんたって10メートルの三角屋根だもの、下から見上げていたら首が痛くなるほどだ。
隣の婆ちゃんが「プロの板金屋でさえ、おっかないから登らないっていって、奥さんもあんた、止めときなっていってたんだよ。いやあー、驚いたね、だんなさんおりとイでー」などという。近所のご主人も「うわー、登ったんだー。いやあ、すごいねえ。気をつけてね。気が散ると悪いから引っ込むわ」外野がいなくなってからも作業は黙々と進み、命綱が届かない所まで作業し、終わった時には、やるほうも見るほうもぐったりこんだった。
プロに頼んだら、足場を組んで大事になり、お金もかなりかかったかもしれない。それを67歳の素人の爺さんが一人でやって、お金も梯子の材料やらで1万円にお釣りがきたそうだ。「凄い!父ちゃん素晴らしい!」とここぞとばかりに私も褒めまくった!
次の日やってきたお兄ちゃんは、吃驚仰天目を丸くしていた。
これに自信をつけた2人は、「今度はペンキだな。うん、出来そうだな」などと言っている。いやあ、それは無理でしょう。ペンキは流石に無理じゃない?でも案外この素人兄弟はやちゃうかも・・・。恐るべし、老人パワー!

無事大役も終え、兄夫婦が帰ったあとも田舎暮らしを2人で満喫した。
釣りしたり、土いじりしたり、散歩にでたりドライブしたり、素晴らしい夕日に見とれたり、ミステリードライブを2時間もしたり手紙を書いたり絵を描いたりと、ちっとも飽きずに7日間田舎暮らしを満喫した。
このままここで暮らしてもいいなあと思ったけど、家に帰りトイレに入ったら、ああ、やっぱり家のトイレは落ち着くなあ、なんていいトイレなんだろうと変な感動をした私。