月心寺

去年の暮れ、朝のテレビに月心寺の尼さんが出ました。
あっ、明道尼さん!    もうあれから40年の時がたっているのに、ちっともお変わりなく、お元気な様子に驚嘆しました。今は確か86歳位になられているはずなので、私が出会った時は、まだ40代の頃だったのでしょうが、姿は確かに変わりましたが、溢れるようなエネルギーはちっともお変わりなく、懐かしく拝見しました。
私がまだ学生だった頃、京都に一人旅にでました。
確か、蕎麦屋や本屋でアルバイトしたお金を貯め、10泊位しました。
といっても親に仕送りして貰っていた貧乏学生だったので、泊まる所もユースホステルばかりでした。その中に大津月心寺ユースホステルというのがあって、一人で電車に乗ったり、バスにのったりして大津まで行きました。
着いたそこは、由緒あるお寺で、確か走井とか言う所で、近くに「走井の餅」という名物がありました。
今もユースホステルをしているかどうかは分かりませんが、あの頃お寺のユースが珍しく、禅宗の総本山の学校に通っていた私は、仏教青年会というクラブに入って、修行僧と一緒に座禅を組んだりしていた、ちょっと変わった女の子でした。だから、多分お寺のユースに惹かれたのだと思います。
かなり昔の事なので、断片的にしか思い出せないのだけれど、厨房で手伝わされたり、明道尼さんと一緒にお風呂に入った記憶があります。あの時、「あんさん、わて手が不自由さかい手ぬぐいしぼってんか?」と言われたのが、はっきり覚えています。多分、若い私は色々感じたのだろうけれど、ただ自分一人だけの思い出として長い間忘れていた事でした。それが、3年前、母の看病で毎日の様に小樽へ通っていた時、溜まった悲しさと空しさを解消するべく本屋に寄って、心を静めるのが私の唯一の慰めでした。駅ビルのその本屋で、まさに何気に飛び込んできた一冊の本、帯の写真を見た瞬間、あれ、この方に私会っている!誰だろう?どこであったのだろう?本をめくり疑問はすぐに解けました。
大津の月心寺!ああ、あの時のあの尼さん!すぐに本を買い、家まで待てずに、近くの喫茶店に入って本をむさぼり読みました。本の題名は「ほんまもんでいきなはれ」私が出会う3年程前に交通事故で左手、左足が不自由になった事、nhkの朝ドラ「ほんまもん」のモデルになったこと、ごま豆腐と精進料理で有名な事などなど驚く事ばかりでした。
懐かしさのあまり手紙を書いたら、しばらくたって物凄い達筆のお便りを頂戴し感激しました。
そんなご縁のある明道尼さんがテレビで語った言葉の数々に、またまた感動しました。懐かしい厨房やお庭も映り、近いうちに必ずあそこに行って明道尼さんに会おう、会いたいと思いを新たにしました。