運河のほとり

生粋の小樽っ子の私は、めったに観光などしないのですが、釣りの好きな連れ合いにくっついて、最近何度か小樽の街をぶらついています。
母のいない小樽は少し辛くて、そこここに母との思い出がありすぎ、つい涙ぐんでしまいます。
やっと、母のいない小樽を涙なしで歩けるようになったかなあ。そして、先日ぶらりと歩いた私の目に石倉の間からふと見える運河が目に入りました。狭い石倉と石倉の間の先に運河があって、まるでイタリアのよう。イタリアは行った事がないけれど・・・。
石倉には蔦が絡まり、なんだかワクワクしながらその路地に入っていくと、喫茶店がありました。
その名も「ほとり」。中に入るとおじ様がヘッドホンをつけてエレクトーンを弾いていて、私ににっこり「いらっしゃいませ」「あ、こんにちわ」そして運河がまるで額縁の中の絵のように見える一角に腰を下ろし、コーヒーを飲みながら動く絵に魅入られていました。丁度、絵やアクセサリーなど売っている露店のお店が3軒見え、そこを行きかう観光客の人々、そして露店のおじさんやお兄さんやお姉さん達、そして、何羽かのカモメ達。退屈しのぎに運河に釣り糸を垂れるひげのおじさんが釣った魚をカモメに投げる、その光景がなんども繰り返され、私はなんと2時間半も飽きずにその席に座っていました。そして、縁のついたエレクトーン弾きのおじさま。なんと両手が動かない障害者のおじ様の奏でるエレクトーンは、心に響きました。あとでお話しをした時、1曲1曲心を込めて、大げさだけど魂を込めて弾いているとおっしゃいました。そのおじ様とすっかり意気投合してなんとも楽しい大人の会話を楽しみました。
連れ合いに話すと、いつもの事だみたいに軽く流されたので、ま、いいか。
また、一人でぶらっと行ってみよう。でも、気の置けない仲間達と行くのもいいかなあ。彼女達にあの光景とエレクトーンを聴かせたいとも思っている私です。