電話

用事があって実家に電話をしたが、妹がなかなかでない。
突然、「はい、xxです」と亡き母の声が聞こえてきて懐かしさのあまり涙が溢れた。留守番電話の録音がまだ消されていなかったのだ。
丁度去年の今頃自宅で旅立つ母を介護して、私は辛さと死に行く母の看護が出来るという幸せと様々な現実的な軋轢の間で揺れ動いていた。
とても言葉では表現できない状況の中で、こういうことがなければかって育った我家でこうして過ごすなどということはないという、この時を楽しもうと思っていた。
母の下の後片付けに裏口に出たとき、小樽の海の向こうが真っ赤に染まっているのを見たときは、感動のあまり一人声を出した。
23年過ごしたこの家だったが、こんな光景は初めてだった。
海の上に光り輝く太陽を前に声をあげて泣いた。
お母ちゃんのおかげ・・・・そう思った。母がこの至福のときを私にくれたと思った。
すべてが終わった今、母の私への思いが強く感じられて、母への感謝の涙が溢れる毎日です。