16歳の琴線

きっと琴線に触れたのだろう。
一人でチエンマイに行き、6日間「希望の家」というタイ山岳民族の子供達の孤児院で泊まり込んで過ごした16歳。
「出来るだけゆっくり迎えに来て」と父親にメールがきて、迎えに行くのを1日遅らせた。
我々が行く時間も分っているのに、彼女は何の帰る用意もしていなかった。
爺ちゃーん、あーちゃーん、とハグしに来たのに「帰りたくなーい」と開口一番。
そう言われても、おいていくわけにもいかない。
部屋に入ったら、リュックの中に何も入れていない、洗濯物も干したまま。
ああ、この子、本当に帰りたくないんだなあと彼女のここにいたい、でも帰らなくては・・・・のジレンマに苦しむ様にこちらも困った。
何とかおくらせようとする彼女、でも、次の予定がある我々。
無理やり車に押し込んだみたいな子供たちとの別れ。
車に乗ってからも「ああ、まだ居たかった!帰りたくなーい、観光なんかしたくない・・・・」
そう言われても・・・・。
その後、プーケットのシミリット諸島の島めぐりで、天国みたいに美しい海で大いに楽しみ、バンコクでは日本人経営者の会社での体験など、それなりに楽しんでいた。
帰国して、10日ぶりに会った16歳、開口一番「決めたから!夏休みに、またあの場所に戻るって。これからは、必要な物しか買わない。欲しいものは買わない!お金を貯めてチエンマイに戻る。バイトして、勉強も頑張って、タイ語も英語ももっと上手くなりたい!」
何も無い所にポツンと建っている高床式の希望の家、豚を飼い、田んぼを耕し、鶏の声で目を覚まし、月夜を眺めながら眠る夜、コンビニもない、何も無い、そんな所が何故彼女を引きつけるのか?
「分らないんだよね。何がそんなに自分を引きつけているのか。でも、行きたいんだよね」
普段は明るく屈託のない子供達が、時折みせる辛い過去のトラウマに、自分も又、母親に縁の薄い少女時代を過ごした彼女には、重なるものがあるのかもしれない。
16歳で何か確かな物を掴んだ彼女、きっとそこへ行く為に、様々な事をクリアするのだろうなあ。
キラキラ輝く瞳がまぶしい。
そんな孫の姿を応援できる婆としての幸せ。